正直、今回はジャン・シージャンの優勝に救われた。彼は2008年のフォーミュラウエストで最大のライバルだったドライバー。全18戦中、第17戦でギリ、ウチがタイトルを奪取すると言う実に際どい戦いだった。その後、彼はあの名門のPREMAへ行き、フォーミュラルノーのイタリアンチャンピオンシップを戦うと言う立派なキャリアを積み上げる(つまり小林可夢偉や中嶋一貴の後輩に当たる)。
色々思うところはあるが、まず今回のマカオGPのイベントとしての立ち位置から考えてみる。
今回のマカオGPの参加ドライバーのライセンスは中国・香港・マカオ・中華台北なる国(地域)に限定されていた。実はこれ、もの凄く曲者で、こうなると最大限譲歩してもリストリクテッド・イベントとなり、国際はもちろん、リージョナル・イベントにもならない。
直前にポルシェカップアジアの取り止めが発表された。公式な理由は〝準備不足〟としている。が、この開催グレードを考えると中止の理由が良く分かる。
ポルシェカップアジアはリージョナル・イベントとして登録されていて、その前提でポルシェAGから予算を割り当てられている。ところがそれがリストリクテッド・イベント、それも台湾として門戸を開けば結果も違った可能性もまだあったが、中華台北は中国の一方的な呼び方。つまりリストリクテッドとは言え、事実上の中国一国のナショナル・クローズド・イベント。
登録として〝ポルシェカップアジア〟として登録し、そのレースに参加している、或いはノミネートしているエントラント/選手に対し、『但し参加は中国国籍だけね』と言ったら、シリーズのレジストレーション自体に大きな矛盾を生む。また国際レースでは無く、国内イベントとしかカレンダー登録できない、と言う結果となる。
そうなるとなぜポルシェが開催を取りやめたか?は、その理由の輪郭が逆に鮮明に浮き出てくる。恐らくマカオの体育局とASNであるAAMC、親玉のCAMF(中国汽車二輪運動連合会)はそこに気が付かず、ここまで推し進めたと思う。
それが証拠に今回の競技運営はフラッグの提示の仕方に多くの不満と不信が寄せられていた。オイルが出ているのにオイル旗を出さず、大クラッシュが発生するなど、たびたび大きな事故が発生した。またプッシングによる大クラッシュで、怪我人も結構出た。
マカオの関係者からは『FIAから来ていておかしいだろ!』と、怒りの声が上がっていたが、そうでは無くFIAからは職権委任されたジャン・タオがCAMFから派遣されているだけだった。友人なのであまり言いたくないが、彼は上海のF1でもやらかして問題を起こしている。
この開催区分の重要性って実は中国はあまり気づいていない節があり、〝開催申請して通りゃあ、あとは問題ないだろ?〟みたいなところがある。
それが証拠に今回のテニスの選手問題の対応を見ても『まさかそんな問題に発展するとは思わなかった』と言う空気感が見てとれるし、参加ボイコット問題が噴出しているオリンピックにしてもまた然り。〝決めたら後はコッチのモン〟と言うジャイアン的発想は通じない事を思い知った方が良い。
そう言う意味もあり「後からあの二年(2020-2021)は歴史から消す可能性があるよ」と言っているのだ。
事実、ヒストリーを示す写真にマカオ旅遊局はマカオGPの写真(大体は前年のモノ)を使うが、今年の開催プロモーション以外で、去年の写真を使っているのは見た事が無い。政府もそこは理解している。マカオは京都なので普段は大人しくモノを言わないが、腹の中は結構真っ黒だ。笑顔で人を切り捨てるのも得意技。
今回は、インシデントが次のインシデントを呼ぶケースが多く、そう言う意味では中華選手権をそのまま呼んできてしまった感が拭えない。『旗を見ていないのか!』と言う意見もあるが、旗を見るどころかシッチャカメッチャカな振り方をされたら、ドライバーだって瞬間の判断に狂う。
国歌は中国国歌のみ。そうなるとグランプリはFIAの規則に〝その国の最高峰のレースに懸ける〟と書かれているから、本来は中国グランプリになるのが正しい。つまり一国二制度の矛盾がこの様な国際イベント(?)になると一気に吹き出す訳で、言っている事とやっている事がキタとそうそう変わらないと言わざるを得ない。
昔、ウチのメンテでレースデビューを果たしたレオくんがSands China GT Cup Race-1で勝ったのは嬉しい |
そう言うワケで【2】へ続く。